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  • 執筆者の写真岸田直樹

書評【医療現場のための薬物相互作用リテラシー】


【医療現場のための薬物相互作用リテラシー】 https://amzn.to/34Ri7Pa

素直な気持ちを書評に書かせていただきました (掲載のご許可をいただいています)

もしよければご覧ください

新しい時代を感じる、そんな書籍です

*********以下、書評**********

 これは困ったな…。それが本書を読んだ総合診療医・感染症医である“いち医師”の率直な感想だ。何が困ったかって?そりゃあ、「この知識・考え方はもはや一人の医師が“臨床のすべての領域”であたりまえのものとして実践するのは不可能だ」と感じて困ったのだ。それくらい薬学の臨床における専門性かつ“その奥深さ”を感じる分野、それが薬物相互作用(DDI)だ。自分の専門分野である感染症領域や、コモンな疾患に関連した有名どころの薬物相互作用はなんとか頑張ってきた。しかし、専門分野以外の薬物相互作用などもはやカオスで見てみぬふりをしたくなる。が、進化し続ける高度な医療により、次々と各科でより専門的な薬剤が患者には投与される。コモンな疾患に関連した薬剤の相互作用ならいけるといっても、このひどいポリファーマシーの時代に「自分がすべで把握できている」なんてハッタリをかます医師には自分は診てもらいたくない。そのくらいこの領域は奥深い。それを感じられるのが本書だ。

 ただ、実は自分は少し前からここには気がついていた。。。この領域はいち医師のみが勉強して対処するには厳しいと…。「これぞ薬剤師の力を!」と。なので、大変申し訳ないが、薬物相互作用に関しては自分がどこまでできるか?は潔くありたいと思う。本書を読めば、薬剤師のすごさを垣間見ることが可能だ。今は、担当薬剤師を探し、「○○さん、抗真菌薬投与するんですけど、相互作用で注意するものがないかチェックしてもらっていいですか?」とか「○○さんのこの原因として、相互作用でありそうなものあったら教えてください~」と既に薬剤師の力をかなりいただいている。丸投げだとは言わないでほしい。上記の様に自分なりに努力はしているつもりだ。「薬剤師ってすげー」、と心から思う分野、それが薬物相互作用だ。が、そこへの返答にまだまだ薬剤師間にばらつきの大きさも感じる。。。

 さて、そんな本書。医師はまずDDIの専門性とその奥深さ、何より薬剤師のすごさを本書から垣間見てほしい。特に第1章の基礎知識は医師としても必須だ。ここは薬物相互作用を勉強しようと頑張ってきて砕け散ってきた自分にも大変ありがたいわかりやすさだ。そして各医師が関わる専門分野に関連したものを各論で確認したい。これから臨床でより活躍することになる新しい認定看護師・診療看護師もこの作業は必須だ。

 さてさて、薬剤師のみなさん。本書が薬剤師にとって極めて有用だと感じるのは第3章「臨床上重要な薬剤の実践的DDIマネジメント」だ。まさか「○○の相互作用の可能性は否定できません」なんて医師に情報提供していないだろうか?可能性だけではなく、妥当性を患者ごとに定量的に考えて提示しなければ、臨床における情報はノイズ以外の何物ではない。ここを実際の症例を交えて、実践的な薬物相互作用へのアプローチとして紹介されているのが本書の大きな特徴であろう。

 新しい時代の薬剤師だれもが、この書籍の知識・考え方をあたりまえのようにもっていると勝手に思い、日々相談しますのでよろしくお願いいたします。こんな薬剤師がいつもそばにいてくれると嬉しい、そう感じられる書籍である。


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