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執筆者の写真岸田直樹

「誰も教えてくれなかった風邪の診かた」 の中国語版が出ました


拙著、「誰も教えてくれなかった風邪の診かた」 の海外版としてすでに韓国語版が出ていたのですが、中国語版が出て手元にとどきました。ブログでもお伝えしてきた通り、薬剤耐性(AMR)は全世界的な問題で、この前の伊勢志摩サミットでも主要議題で話し合われました。AMRアクションプランは厚労省のHPにあります。サミットをきっかけに予算もつきましたね。是非、概要だけでもごらんください。

日本はアジアの中心になって薬剤耐性、抗菌薬適正使用に取り組むことを求められています。薬剤耐性を作ってしまっているその大きな原因の一つが風邪に対する不適切な抗菌薬処方です。”不適切”なんて言ってしまいましたが、実は風邪診療は意外に難しいのです…。なぜなら、医療機関を受診してもその症状が本当に風邪(ウイルス性上気道感染症)かを証明することは実はできません。風邪を引き起こすウイルスは何百といて、それを外来で同定することはほぼ不可能だからです。では医師はどうやって風邪かどうかを判断しているか?というと、症状や診察所見から判断しているわけですが、そこが実はクリアカットにいきません。風邪に似た風邪ではない疾患も多く意外に難しいのです。もし患者さんから「本当に風邪でいいんですか?」なんて聞かれたら医師としては100%風邪とは言えないため正直困ってしまうのです。心配なのは細菌感染症ですので、そうなると医師も「じゃあ安心のために抗生物質だしておきましょう」となっていたわけです。その結果、現在の薬剤耐性が世界に急速に広まることになってしまいました。

 このように風邪診療は簡単なようで難しく、しかも医師も体系的に教わることは大学ではないですし、研修医になってもほとんどなかったという現状からこの本を作成しました。「風邪診療なんて簡単だ」なんていうことはできなく、とても奥深い分野で、適切な学びの場・教育が医師の世界でも必要です

韓国、中国のお知り合いのかたいたらこんな本があることを教えてあげてください。

 そんなにいないですよね(^-^;

 ちなみに、風邪は医師だけが診られればよいとはなりません。基本的には勝手によくなる疾患のひとつで、風邪薬とその周辺グッズは薬局のほうが充実していたりもします。つまり、セルフケアのひとつとして一人の人間として風邪かどうかを判断することができなくてはいけません。そこで薬局薬剤師さんを相談相手の一人として対応することができるようにするために、「総合診療医が教える よくある気になるその症状 レッドフラッグサインを見逃すな!」を作成しました。医師向けのものよりもかなりかみ砕いて風邪かどうかを判断するツールを作成しました。また、風邪に関係した様々な素朴な疑問に答えています(みなさんも風邪の素朴な50の質問に答えられますか?)。基本は薬局薬剤師向けですが、ぜひ非医療者の方もセルフケアの指南書として利用してみてください。みなさんが、風邪症状があるときに病院やクリニックではなく薬局を相談相手としていただけることは、薬剤耐性対策にもつながりますし、いま日本が抱えている待ったなしの問題である膨張する医療費の問題にも対応できると思います

 団塊の世代が75歳以上となる2025年には医療費が60兆弱になることが予想されており、少子化で国家予算も減る要素ばかりですのでもはや破たんしていると言われる方もいます。しかし、そう言わずにできるところからやれたらと思います。できることはまだまだたくさんあると思います。

 話は膨らみましたが、”風邪”に対する学びは医療者だけではなく非医療者も必須で、それは薬剤耐性にかかわる問題だけではなく膨張する医療費にも関係した、とても大切なコンテンツです。将来的にはこの「風邪の知識・セルフケアの知識」を義務教育の一つとして持っていくことが今後の日本にとって大切と考え、自分は活動しています。

みなさまのご協力が欠かせません

この日本を子供たちの世代に、首の皮一枚でもつなげた形で引き継げればと思います

よろしくお願いしますm(__)m

日本版・韓国語版・中国語版とならべてみました。中国語版が一番コンパクトで、韓国語版はむしろ大きくてさらに独自性の表紙に変わっていて、国民性を感じますね。次は台湾語版が出る予定です。


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